- 作者: 開沼博
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/03/08
- メディア: 単行本
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『漂白される社会』開沼博著を読む。
『漂白される社会』って森岡正博の言う『無痛文明』のようなもの
なのだろうかと思いつつ、読み進む。
「売春」「ホームレスギャル」「シェアハウス」「生活保護受給」斡旋ビジネス、
「スカウトマン」「脱法ドラッグ」「右翼」「新左翼」「偽装結婚」
「サッカー留学生」「中国エステママ」と、
香ばしいテーマがラインアップされており、
各章を読む度に漂白されていない「現代社会の」現実がズシリと迫ってくる。
決してアジることはなく、抑制を効かせた体温の低い文章。
社会学者というよりもライターが書いたノンフィクション。
同じ題材を素に、小説家なら、想像力をふくらませて、
さらにドラマチックな面白いものに仕立てるだろう。
漂白されていない現実は、汚いのか、汚れているのか。
隠蔽、蓋をする代わりに、漂白する。
除菌・漂白。
作者は、こう述べている。
「「漂白」とは、「周縁的な存在」が隔離・固定化、不可視化
され、「周縁的な存在」が本来持っていた、社会に影響を及ぼし変動を引き起こす
性質が失われていくことを示す。−略−それは、これまで社会にあった「色」が。
失われていくことを示す」
脱色か。ブリーチアウト・ソーシャル。
「かつてあったような明確な達成目標や物語・歴史観が、社会に
設定されなくなりつつある。「自由」−略−や「平和」−略−は行き先を
見失い、ただアディクショナルに「自由」や「平和」を求めるなかで、
「漂白」の無限増殖運動は始まり、続いていく」
「漂白」されてたまるかと思いつつも、知らないうちに漂白されたり、
漂白してたりする。
漂白は、リセットなのだろうか。
はじめの白さが持続するとか。
でも、凝視すると、過去の生きてきたシミや痕跡がうっすらと見えたりして。