記憶する自己は独裁者

ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?


ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか?

ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか?



『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン著を読む。
上下2巻の大著だが、原文がいいのか、翻訳がいいのか、
スポンジが水を吸うように読めてしまった。


著者は、かの「プロスペクト理論」の生みの親。
わたしたちが判断と意思決定において
いかに錯覚や誤解をしているのかー
それも自覚することなしにーを検証している。


こんなところ。2つ3つ紹介。

「後知恵バイアスは、意思決定者の評価に致命的な影響を与える。
評価する側は、決定にいたるまでのプロセスが適切だったか
どうかではなくて、結果がよかったか悪かったかで決定の質を
判断することになるからだ。たとえば、リスクの低い外科手術の最中に
予想外の事故が起き、患者が死亡したとしよう。
すると陪審員は、事後になってから、手術はじつはリスクが高かったのであり、
執刀医はそもことを十分知っていたはずだと考えやすい。このような「結果バイアス」が
入り込むと、意思決定を適切に評価すること、すなわち決定を下した時点でそれは
妥当だったのか、という視点から評価することはほとんど不可能になってしまう」

東日本大震災原発事故などで後知恵バイアス、働いていたよね。
マスコミの論調って、ほとんど、これのような気がしてきた。


『ビジョナリー・カンパニー』などビジネス書に関して。

「多かれ少なかれ成功した企業同士の比較は、要するに、多かれ少なかれ運のよかった
企業同士の比較にほかならない。−略−偶然が働くケースで出現する規則的なパターンは、
蜃気楼のようなものである」
「たとえCEOがすばらしいビジョンとたぐいまれな能力を持っているとあなたがあらかじめ
知っていたとしても、その会社が高業績を挙げられるかどうかは、コイン投げ以上の確率で
予測することはできないのである」

人はなぜビジネス書を読むか。
ま、ドリンク剤を飲めば、がんばれるといった一種のプラシーボ効果を期待しているのだろう。

「経験と記憶を混同するのは、強力な認知錯覚である。これは一種の置き換えであり、
すでに終わった経験も壊れることがあるうる、と私たちに信じ込ませる。
経験する自己には発言権がない。だから記憶する自己はときにまちがいを犯すが、
しかし経験したことを記録し取捨選択して意志決定を行う唯一の存在である。
よって、過去から学んだことは将来の記憶の質を最大限に高めるために使われ、
必ずしも将来の経験の質を高めるとは限らない。記憶する自己は独裁者である」

非科学的、非経済学的なことをいうが、
あえて記憶は記憶の一部をエラーさせるのでは。
勝手に誤メモリーさせるのでは。


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