病罹文化史

隠喩としての病い

隠喩としての病い

『隠喩としての病い』スーザン・ソンタグ著を読む。
結核と癌の病罹文化史とでも言うべき内容。
結核もかつては死に至る病で、
肺結核は肺病と称され、
高原の温泉地のサナトリウムなど、
転地療養などぐらいしか療法がなかった。
癌に比べて結核は、緩やかに症状が進行するからだそうで、
予防や治療法が確立されたこともあるだろう。
オールドファッション的な一種の猶予を感じさせ、
洋の東西で結核文学というジャンルを確立した。
作者はトーマス・マンの『魔の山』や歌劇『ラ・ボエーム』などを挙げている。
日本なら堀辰雄の『風立ちぬ』や立原道造が思いつく。


結核はロマンティックだが、癌は「戦争」だと。

「癌は「殺し屋」とも言うべき病気であり、
癌にかかった人々は「癌の犠牲者」と呼ばれる」

「治療の目的は癌細胞を「殺す」ことになる。
治療(化学療法)に伴う不快な副作用も宣伝される、
いや宣伝されすぎている」

作者自身の「癌体験」からくる治療や周囲の反応などから、
「癌の暗喩」自体が「拡大」してしまったと。
政治家が悪の根源と思われる対象を癌扱いしたり。
癌文学、癌映画は、どうしても切実過ぎていけないし。
それと癌に包含されているものが、余りにも大き過ぎる気がする。
バラ科の植物に匹敵するぐらい多彩だし。


日本ではどうなっているのだろうと、具体的に
交通事故と癌と結核の死亡者数を
ネットで調べてみた。
データの年が合致していないが、
改めて癌で亡くなる人の多さに驚く。


「2012年の全国の交通事故死者は4411人で、前年より201人(4.4%)少なく、
12年連続で減少 」
警察庁のまとめ

「2011年1年間の死亡数のうちトップは悪性新生物(いわゆる‘がん’)で、
死亡者数35万7,305人で総死亡数の28.5パーセントを占めている」
厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」

「2010年 結核死亡者数 2129人」
厚生労働省結核登録者情報調査年報集計結果 


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