ロングテーカ

失われたものを数えて---書物愛憎 (河出ブックス)

失われたものを数えて---書物愛憎 (河出ブックス)

出ていたのを知らなくて、
『失われたものを数えて 書物愛憎』 高田里惠子著 を読む。
ネコがこっそりツメを立てるように、作者は小出しに毒を出す。
気がつけば、しびれて動けない。そんな感じ。


唐突だが、市場は需要と供給から成り立っていると習ったよね。
供給の方が過剰になると、ありがたみが薄れ、値下がりする。
その図式に当てはまるのがいまの大学生だ。
やれ就活が大変だとか言うのも、むやみやたらに大学を増やしたかららしい。
ネコも杓子も大学生、学士様がダブついている。その結果だと。
作者はこう書いている。
「読書の大衆化、高等教育の大衆化、学術教育の大衆化、
出版の大衆化」と。


ただその恩恵を蒙ったのが、作者など大学院を経て
高学歴ニートにならずに大学の先生になった面々だそうだ。
駅弁大学」とか称され、ポコポコ大学ができていた頃は、
教員不足だったのだろう。
作者は東大大学院でドイツ文学を学ぶが、
かつて文学青年たちに愛読されていたドイツ文学は、はや凋落の一途を辿る。
ドイツ文学だけじゃなく、たぶん、文学全体が。
象牙の塔もね。ついでに出版もね。一蓮托生だもの。
ロングテールならぬロングテーカ(低下)でいまに至る。


だが教条主義などさらさらない作者は、
トーマス・マンヘルマン・ヘッセゲーテなどの風化を
かつての教養の風化を詮無いこととしているような。


文学青年というと、いまは小説を書いている若者と思いがちだが、
かつては文学から哲学書まで濫読しているヤングのことを意味していたそうだ。
大学生も数が少なく、彼ら・彼女らが読むのはわかるが、
勤労青年も文学を嗜んでいたとか。
ま、娯楽が少なかったこともあるかもしれないが、
本は知的なアクセサリーだったのだろう。


「理科系青年」には文学が必要か否か。
ここも永遠のテーマだ。
あとは東京帝国大学よりも一高の方が格上というのも面白かった。
なんか私立大学よりも私立大学の付属高校の方が
偏差値が高いという図式なんだろ。
具体例は割愛させていただく。


作者はぼくより3歳下なので、ほぼ同世代。
確かに澁澤龍彦は好きなことは好きだったが、年上の世代みたいに
盲愛や崇拝はしなかった。
ぼくは、澁澤の一時期伴侶だった矢川澄子の方がひかれていたし。
このあたりを要するに澁澤(以下カルチャーナヴィゲーター)経由
西欧文化ではなく、直接最先端の西欧文化が
入るようになったからと述べている。


何年か前某大学の取材で多摩にあるキャンパスを訪ねたことがあったが、
女子学生の多さに驚いた。質実剛健というか地味な校風を抱いていたが。


他の作者の著作のレビューは、こちら。
『学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常』 中公新書)
http://www.bk1.jp/review/470715

『男の子のための軍隊学習のススメ 』 ちくまプリマー新書
http://www.bk1.jp/review/470716


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