底は出たの

同業者から移転通知のメールが来る。
短い近況を知らせた返信メールをしたら、返信の返信が。
押しなべて去年よりは今年は良いそうだ。
底を脱したのならうれしいが、たまさかということもある。
一弱小受注産業ゆえ受身を取るのは、そこらの猫くらい上手いのだが。


図書館から借りた『永井龍男全集 第9巻 雑文集1』をぐいぐい読む。
作者は文藝春秋社の有能な編集者・編集長として
芥川賞・直木賞の裏方などを務めた。
戦後、パージにあって否応なく、あるいは本来の道だった作家になる。
売れなかったら中華料理の屋台を引くという一文に出くわした。
何たる潔さ。芸術家じゃなくて言葉の職人か。
若かりし頃、中華料理店で働いていたことがあり、
中国人の料理人の作る様を盗み見してたとか。
作者は、美しい文章より「正しい文章」を書くことを念頭に置いていたそうだ。
古びていない文体は、いい意味でのジャーナリスティックな視点が
あるからなのだろう。
神田生まれの作者にとって第二次世界大戦の空襲で
壊滅し、復興した東京は、
幼い頃の東京とは似て非なるものらしい。


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