腑に落ちる

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)


『競争と公平感 市場経済の本当のメリット 』
大竹文雄著の読書メモ。

「ピュー研究センターの調査によれば
日本人は市場競争に信頼を置いていない。
「貧富の格差が生じるとしても、自由な市場経済で
多くの人々はより良くなる」という考え方に賛成する
日本人の比率は約五割で、先進国のなかで圧倒的に低い」

どうも「市場競争」と聞くと身構えてしまうのは、
なぜだろう。TVなどで大抵そういうことをいう学者や
コンサルタントやベンチャー企業の若社長の風体や
横文字ばっかの物言いが胡散臭気に感じられるからなのだろうか。

それじゃあいかんザキ(古ッ!)と作者はいう。

「それでも市場競争という仕組みを私たちが使っていくのは、
−略−より豊かになれること、誰でも豊かになるチャンスが
あることが大きなメリット」

だからだ。

そして

「誰でも競争に参入できるという公平性が担保されている
ことが、市場主義の一番重要な点だからだ」

そう、そうなんだけどね。

「日本では資本主義の国であるにもかかわらず、
市場競争に対する拒否反応が強いのである」

これは、「学校教育の影響?」かもと作者は述べている。

さらにこうも。

「教育の目標はお金を稼げるようになることでなくて、
豊かな情操をもった人間を育てることだ、という意識が
学校では強いのだろう」

それは道徳、モラルであって「金融リテラシー」ではないよね。

アメリカびいきではないが、向こうの経営者の自伝を読むと、
大概子どもの頃から自分で工夫してお金を稼ぐ。
それが起業への第一歩となっていることが多い。
その大切さや喜びを実感することって、
もっと日本の子どもたちにさせてもいいだろう。
キッザニアなどのシミュレーションじゃなくてモノホンで。
感慨がちゃいまんがな。

自分で稼ぎ方を知っていれば、会社に依存しなくてもいいだろうし。
ま、理想論といえばそれまでだが。

この質問も考えさせられた。

「「所得はどのような要因で決まっているか」という質問」で、
「アメリカ人が重要だと考えているのは努力、学歴、才能の順番で
あるのに対し、日本人は努力、運、学歴の順番である」


日本人が二番目に挙げている「運」。思い当たる節がある。
あるどころか、日本全国中なにかにつけ「運」の連発かも。

「二〇〇〇年代になってから日本人の価値観が勤勉から、
運やコネを重視するように変化してきた可能性がある」

努力が報われない社会とか、一種の諦観ムードの蔓延か。
ちょうど風水や占い、風呂敷を広げればスピリチュアルブームとも
シンクロしているのは偶然じゃない気がする。
苦しい時の神頼み。じゃなくて運頼み。

ここも、なるほどと。
なぜ政策は高齢者優遇と思いがちなのか。
それは有権者、選挙に行く人が圧倒的に高齢者が多いから。

「高齢者のほうが若年者よりも投票率が高い」

ゆえにそちら向きの政策になるという説明は腑に落ちる。

いつものようにきわめてわかりやすく書いてあるので、
よくわかる。あるいはよくわかったような気がする。


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