泣くのはいやだ、笑っちゃおう

朝霧・青電車その他 (講談社文芸文庫)

朝霧・青電車その他 (講談社文芸文庫)

ほぼ引きこもり状態が続いている。


永井龍男の『朝霧 青電車 その他』を読了。

「一杯のハイ・ボール、一本のビールが、帰宅の足を
軽くする―、そんな時代が、この間まであった」
『花火』より

ああいい一文だと思う。
ひと仕事終えて会社の同僚と安酒を呑む。
で、いまにもいえるよなと思う。
でも、いまなら「帰宅の足を重くする」って感じかな。


○『朝霧』
主人公は元教師の老人でボケている。
キャラクターが『先生の鞄』の先生と重なる。
この老夫婦の短いやりとりが、小津の映画のよう。
笠智衆と東山千恵子のような。


○『青電車』
これは凄みのある作品。
せっかくいい夫に出会えたのに、
浮気の虫が出て逢瀬を重ねる女。
罪の意識からか、
省線に飛び込む。
轢かれながらも意識はかすかにある。
生と性と死。
読後感がなんとももの哀しい。


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