- 作者: ノーマフィールド,Norma Field
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/01/20
- メディア: 新書
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正解は、元銀行員だった。
てなことをふと思ったのは『小林多喜二−21世紀にどう読むか』
ノーマ・フィールド著を読んだから。
多喜二といえば、小樽、『蟹工船』、拷問死の3点セットで有名だが、
実際のところは、よく知らなかった。
以前にも書いたが、『蟹工船』の読後感はいまでいうノンフィクションのようなもので、
これで拷問死かよと腑に落ちなかった。
小樽時代、叔父の経営するパン店から通学するさまは、
伊藤整の作品で知っていたが、
生家が貧しく成績優秀な多喜二はおじの援助で働きながら、進学することは知らなかった。
当時の小樽の賑わいと北方進出の金融拠点だった北海道拓殖銀行への就職。
地元じゃエリート。できのよい行員ぶりと作家業の二束のワラジを履くも、
サヨク運動、アカのレッテルを貼られ銀行を辞めざるを得なくなる。つーかクビ。
伊藤整が描いた多喜二像は、クールでオトナなイメージだったが、
上京した生多喜二の垢抜けない風貌、朴訥とした喋りは、
脚光を浴びている若手作家とのギャップが甚だしいものだったとか。
収監され、「プーシキン、バルザック、ディケンズなどと出会う」、
「チェーホフの再発見」も。
そこで、いままでの自作を見直し、
釈放されたらプロレタリア文学ではない、
新たな作品に取り組もうと考えていたのだろう。
その矢先、「3時間の拷問」で殺される。享年29。
「非合法活動」もマジにして、転向しなかったのも、
元銀行員ならではの律儀さを感じる。
他の作品も読んでみることにしよう。
流行作家(といってもあながち間違いじゃないよね)ゆえ
風化している気がしないでもないが。