肉食系


氾濫 [DVD]

氾濫 [DVD]

『文学の器』坂本忠雄著でリコメンドされていた本から
『氾濫』伊藤整著を、寝る前と起き抜けにちょっとずつ読んでいた。
絶版なんだけど、幸い図書館に新潮文庫版があった。
昔の文庫本なんで字がちっせーの。8ポぐらいか。
で、部厚いの。
100均で買った老眼鏡を探して読む。


主人公は接着剤を考案して企業に莫大な利益をもたらす。
それまでは風采のあがらない技師だったが、
地位も-今は役員- 、収入もあがっていく。
家庭もそれに伴いグレードアップしていく。
妻と娘の成り上がりの金持ちぶりに半ば辟易気味。
50歳を過ぎて多少は老いもあるが、性欲は衰えず、
外に女をつくる。
さらに、かつて肉体関係のあった若い女性との再会。
つかの間の逢瀬。なかなか官能的。
渡辺淳一のさきがけ?とも言えるような、言えないような。
いやはやともかく男と女の性を、それだけじゃないな、
人間の欲望などを赤裸々に表現している。
主人公の娘に近づき立身出世を狙う貧乏助手など、
どいつもこいつも言うなれば、俗物ばっかなんだけど、
タテ前や世間体を剥がしてしまえば、たぶん、こんなものだろう。
仕事、つきあいなどすべて打算、計算が働いている。
草食系男子とは無縁の小説。
ここまでギトギトこってりした日本の小説って記憶にないな。
読み終えたら鼻の頭に脂が浮かびそう。
折りを見て他の伊藤整の小説を読んでみよう。


映画や連続TVドラマになるなと思ったら、
増村保造がとっくに映画化していた。
主人公が佐分利信、妻が沢村貞子、娘が若尾文子
こりゃ、見なきゃ。


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