崩れ萌え

崩れ (講談社文庫)

崩れ (講談社文庫)

朝晩めっきり涼しくなった。
陽射しも強いことは、強いがやはり秋の気配を
感じさせる。
干した布団を二階にしまって熱気をとるため
放置していたら、早速、猫が丸まっていた。


『文学の器』坂本忠雄著でリコメンドされていた本から
『崩れ』幸田文著を読む。
薄いんですぐ読めるだろうと思ったら、なかなか前へ進まない。
大谷崩れ、由比と大崩海岸の崩壊跡、鳶山の崩壊、桜島など、
日本各地の山の「崩れ」を見に行くルポルタージュ。


「年齢72歳、体重52キロ」の作者が、なぜ、そこにひかれるのか。
ふつう山に行くといったら、美しい景観やら、高山植物やらを
見に行くのに。
人がかなわない猛々しいまでの自然の力を感じたかったのだろうか。
貪欲に地質学関係の書籍を読んだり、案内者を質問攻めにしたり。
精神は衰えないが、いかんせん肉体は老いには勝てない。
しかし、作者は、着慣れぬ洋装で案内人に背負われて
山の崩壊を見に行く。
そのさまは想像するだにすさまじいまでの執念、好奇心だ。
『姥捨て山』のようだと思ったぼくは、不謹慎、不謹慎。
作者の眼の良さは相変わらず。
「私は小石川に住む雑文を書く老女で」などおりおりに
のぞかせる表現はユーモアというよりもリアリストから
くるものなのだろう。


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