霞む

時よとまれ、君は美しい―スポーツ小説名作集 (角川文庫)

時よとまれ、君は美しい―スポーツ小説名作集 (角川文庫)

春分の日は悪天候ゆえ順延した妻の甥の墓参りに行く。
うちから横浜の高台にある墓地までは、
私鉄と市営地下鉄を乗り継いで、ちょっとした旅行。
途中のニュータウンがマンションやビルだらけになっているのに、驚く。
最寄り駅から、菓子・供花などを買い、急な坂を登る。
ようやく辿り着く。みなとみらいあたりは、霞んでいた。
上空を鳴きながら烏が何羽も旋回。
田舎の墓地なら牡丹餅や切り昆布の煮たのやリンゴなどがあるが、
お供え物は、持って帰らなきゃいけない。
桜は、まだうっすらと色づいた程度。
妻の積読コーナーから、この一冊を選ぶ。


『時よとまれ、君は美しい スポーツ小説名作集』
なかなかよくできたアンソロジー。簡単な感想を。


『剣 』三島由紀夫
男子剣道部物語。「男の友情はホモ情である」という
高校時代の友人の名言を思い出した。
凛々しくも汗臭い世界。


『時の崖』 安部公房
あんまり惹かれなかった。


『球の行方』 安岡章太郎
弘前に転校してきた主人公(作者)と地元の子どもたちとの野球の話。
エッセイで読んだような。


『昼の花火』 山川方夫
青春や恋愛、ショートショートの名手であった作者の書くものは、
どれもまぶしくて切ない。


『チャンピオン 』井上靖
イチオシ。ボクサーの半生(一生?)を描いているが、
好きだなあ、この乾いた文体。
社会性をテーマにした初期の劇画のよう。


『100メートル』 倉橋由美子
これもおすすめ。ニュージャーナリズムのような清新な文体。
「きみ」を使って語りかけるのは、作者の十八番かも。


『ナイン』 井上ひさし
元高校球児が犯罪者で捕まる時の、身内や知り合いの複雑な心境。
取り戻せない時の流れ、そんなものを感じさせる。


『いわゆるひとつのトータル的な長嶋節』 清水義範
この人のパスティーシュってあんまり好きくないんだけど、
ネタ的に鮮度が落ちている。


『一刀斎は背番号6』 五味康祐
文豪の末裔が巨人軍の打者でデビューする。この人の作品、読むのは初めて。
意外と面白かった。アレンジすれば、漫画化してサラリーマン向けコミック誌に
載せるのもあり。


『北壁 』石原慎太郎
作者名を伏せれば、外国の山岳短編小説って感じ。


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