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編集者 国木田独歩の時代 (角川選書)

編集者 国木田独歩の時代 (角川選書)

企画書の修正をする。取材仕事は、どうも不穏な動き。
1件はペンディング、もう1件は連絡待ち。見積競合なのだろう、たぶん。
時期的に重なることはないとは思うが、
最悪、ないということも想定しておかないと。


『編集者 国木田独歩の時代』黒岩比佐子著を読む。
国木田独歩というと日本の自然主義小説の草分けなど小説家の印象が強いが、
実は名雑誌編集者、ジャーナリストであったという。知らなんだ。
作者の丹念な資料発掘によって、彼の有能な編集者ぶりが明らかにされていく。
たとえば報道写真雑誌。
これは名取洋之助の「NIPPON」がてっきり、パイオニアと思っていたら、
さにあらず。国木田独歩だった。
いまもある『婦人画報』も、−あの重たい月刊誌−はじまりは独歩に辿り着く。


編集者と作家に求められる資質は異なると思うが、
独歩は、なぜか、兼ね備えていた。
むしろ、不治の病に罹らなければ、雑誌編集を続けていたのだろうとも。
作家は個人ワークだが、雑誌編集はチームワーク。
独歩は、雑誌編集に関しては、緻密で目端が利いてヒットマガジンを連発した。
自分の目論見が見事に世の中の流れと共振してヒットする。
これが、続いたら、編集稼業はやみつき、中毒になるのだろう。
自分のブレーンを引き連れ、出版社を立ち上げるが、
所属していた出版社の債務も引き受け、結局は、それが命取りとなる。
出版社が財務、金勘定に弱いという体質はいまに受け継がれているが。


この本を読むと、作家よりも編集者として
後世に遺したものの方が多いんじゃないかな。
雑誌のスタイルから、作家、挿絵画家、写真家、編集者の人材発掘・育成など。
日本の小説の黎明期、独歩は早稲田大学の人脈で知己を得ていくが、
さまざまな個性的な人物との交遊は、疾風怒濤の時代って感じ。
だってその当時の企業は、みーんなベンチャー企業だったもの。


個人的に興味を覚えたのは、独歩の薫陶を受けた「日本初の女性報道カメラマン」のエピソード。
作者の執念により、経歴などがわかるのだが、これは朝の連ドラのネタにもなりそうだ。
惜しむらくは、その女性が撮った報道写真が現存していないこと。


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