オリンポスの果実

さて、子どもの夏休み。例によって苦手な読書感想文の宿題がある。
本人も「涼宮ハルヒじゃ、マジィ」ってのは自覚してるらしく、
瀬尾まい子あたりに落ち着きそうだ。


今の子は、洋楽もあまり聴かないが、外国文学も
ハリー・ポッター』ぐらいなのだろうか。
トーマス・マンだのヘルマン・ヘッセは過去の遺物なのだろうか。
日本文学も、よしもとばなな重松清あたりか。


そういえば、中学のとき、田中英光の『オリンポスの果実』を読んだことを
ふと思い出した。
元オリンピックのボート選手の一方的な恋心を回想形式で書いたもの。
読んだときは、あまり惹かれなかった。
作品よりも師であった太宰治の墓前で後追い自殺したという
その激しい生き方に興味を抱いた。


大人になってから仕事で再読することになった。
勤めていた会社に偶然、著者の孫がいて、そのルートで
BSへ売り込むスペシャル番組の企画書をつくることになったからだ。
図書館にあった作品に目を通したが、やはり『オリンポスの果実』がヌケがいい。
『バタ足金魚』の先がけ的作品でストーカーチックな片思いの妄想リビドーが、
みずみずしい文体で書かれている。
作者は偉丈夫でなかなか死に切れなかったそうだ。
頑健な体躯とガラスのような精神力。
アンバランスさ、脆さが、欠点でもあり、魅力でもある。
図書館で借りた古い本に掲出されていたポートレートが、
孫娘によく似ていた。


調べてみたら、文庫にもなくて、青空文庫で読める。


オリンポスの果実


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