- 作者: マイケル・コロスト,椿正晴
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 単行本
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耳と茸は字面が似ている。
夜中に某企業のWebの翻訳がメールで届いており、
急遽、誤字・脱字、言い回しなどの最低限のチェックをする。している。
『サイボーグとして生きる』マイケル・コロスト著の続きを寝転びながら読む。
「人工内耳を頭に埋め込む」ことは、装着、ウエアラブルではない。
ロボットスーツ(下記参照)のように基本的に脱着は考えていない。
だって器官としてそれまでの補聴器の「補」ではなく、完全に機能するのだから。
理系の作者(博士号取得、科学ライター、コンピューター教育のコンサルティング)ならではの
専門的知識とそれと相反するようなキャラクターからなる体験談が生々しくて。
聞えてくるようになる過程は体験者ならではのもの。
ただし、いいことばっかじゃなくて、悪いことだって、いろいろ書かれてある。
なんつーかサイボーグとしてのQ.O.L.(クオリティ・オブ・ライフ)が書かれているわけで。
聞えなくてもいい音まで聞えてしまう、高精度、高感度な人工内耳のもたらす一種の不幸さ。
人工内耳をつけての性行為などは、その白眉。
しかし、おかげでぼくは以前よりしっかりと自分の肉体をコントロールできるようになり、
我慢強くもなった。ソフトウェアだけでなく、ぼく自身もアップグレードされたのである
ロボットとサイボーグが混同している世間に対して怒る作者。
いまはプロトタイプだが、量産できるようになるとスポーツや入浴、性生活などにも
支障を来たさないように改良も進むだろう。
人工内耳は、何も聞えない耳を聞えるようにすることができる
外国語を履修するのとおんなじで年齢が小さければ小さいほど、
このデバイスを導入したほうがいいそうだ。
電話の発明者グラハム・ベル(下記参照)は、「母親が難聴者」であったことがそもそものきっかけで、
後年、電話機を発明するが、直接話すことはともかく、いかに電話での音声が聞き取りにくいかを
作者の文章で知る。
ひと足先にサイボーグ、SF(サイエンス・フィクション)ではなくSNF(サイエンス・ノンフィクション)、
義体化した日常性を読み手に感じさせてくれる。
本筋からはそれるが、作者が紹介した『サンフランシスコ・マガジン』の記事が、
なんとなく日本の状況にも当てはまるのではないだろうか。
今やサンフランシスコでは、何千何万という男女が自宅の寝室に閉じこもり、匿名でインスタントメッセージを
送り、体裁のよいことばかり書いてあるが実態からはかれ離れている膨大な数の個人のプロフィールを
延々と閲覧している……彼らは、非常に魅力的な自己プロフィールと気の利いたメッセージを作成し、新たにアップロードされた異性の
プロフィールをチェックすることにエネルギーを使い果たしてしまうため、友人とどこかへ出かけようとは思わない。
ウェブ上で繰り広げられる恋愛ゲームが、バーやクラブなど、昔から男女の出会いの場となってきた夜の社交場から
エネルギーと客を吸い上げている