宇宙亀

てのひらの中の宇宙

てのひらの中の宇宙

残っていた原稿をメールする。どうにか、間に合った。ふぅ。

とかいいながら、『てのひらの中の宇宙』川端裕人著を読む。
癌が発症して入院中の妻に代わって二人の子どもの育児をしながら
自宅で仕事をしているテクノライターが主人公。

母親が入院というと、どうしても『隣のトトロ』を思い出してしまうが。
七国山病院に入院している母親、あれは結核療養施設だったのだろう。

生き物や星などが大好きな子どもたち。
そのマクロコスモスとミクロコスモス。
受け継いで受け渡す、命のバトン。
万物に宿る命の尊さ、不思議さというと抹香くさいかな。
遥か昔に生まれた宇宙だって、やがて遥か未来には滅亡する。
生まれる命はやがて滅び行く命。
子どもたちの祖父、ペット、そして母もかも…。
そんなことを体験しながら、育つ子どもたち。

ベタベタした父性愛の押し売りのようなお涙頂戴物語にしてないとこが、よい。
といっても即物的でもないし。
作者のブログを読んでいるが、子どもとの川遊びや
日常生活での子どもとの会話など、そのあたりを素材としてぶち込んでいるのだろう。
でも、いわゆる私小説とはまったく違うテイスト。

数年前にぼくも妻が数ヵ月入院して同じような体験をした。
在宅でなかったら到底家事も子どもの世話もできなかったろう。それに暇だったし。
うちは娘との二人家族だったのだが、片肺飛行ながらも、
それはそれで互いに補完しあってなんとか家族の形態は維持することができた。
病因がなかなか判明せず、一時期は衰えていく一方の妻を見て最悪の事態を想定した。
心配しつつ、次の手を考える。悲観しながらも、それを乗り越えていかなければならない。

主人公は長年家族内であたためていた亀の童話を書き上げることにする。
知り合いの編集者の後押しもあったが。
なるほどね、確かに亀の甲羅と化学式とは似てるものねえ。
(ここから先は読んでのお楽しみ)

ラストは、かなりじんと来る。
一生懸命子育てに参加している若いおとうさんなら、
なおさら、万感胸に迫るものがある。

昨夜子どもにつられてCXの月9『のだめカンタービレ』を見る。
原作に忠実過ぎ、なぞり過ぎていないだろうか。
だったらアニメでやりゃいい。実写なら、実写の必然性とかがないと。