<ことば>の仕事

“ことば”の仕事

“ことば”の仕事


仕事の合間や移動時間に『<ことば>の仕事』仲俣暁生著を読み切る。
『季刊本とコンピュータ』の連載インタビューを束ねたもので、
中には、買って読んだのもあるし、図書館で読んだのもあるし、書店で立ち読みしたのもある。
あらためて通読すると、なかなか楽しいインタビュー集だ。
作者のものではいちばんいいんじゃないかと勝手に思う。
『極西文学論』は、極西の意味がやっぱりわからんし、
最近はライトノベルに対抗してライト批評家を目指しているようだが、
ライノベに果たして批評家なんて必要なのだろうかとも思うし。

この本に出て来る人たちは作者と面識のある人で、
つーか、少なくともはじめて会う人はいないし、年代的にも近いので、
インタビューする方もされる方も、いい具合にリラックスして受け答えしている。

紙だろうがWebだろうが、響くことばは届くし、
ことばには書いた人の人間性、人柄が出るし、
やっぱり、最終的にはそのあたりしかないという
わけのわからないものがふと頭をよぎった。

編集・出版系やライター系の人には、特に参考になるはず。

気に入ったところの引用や感想を。

小熊英二

引用するのが書く目的のなかばのようなもので、自分が本を書いているという意識は
希薄なんです。<著述>をしているというよりも、<編集>をしているという感覚がいまも根強い〜

21世紀の和製ベンヤミンを目指すのか。カッコよすぎ。

山形浩生
早く山形訳の『資本論』が読みたい。

佐々木敦

ぼくは『考える』ことは好きだけど、結論を出すことに興味がない。結論が思いつくんだったら、
それを最初に書けばいいわけで。それより自分が考えたりしているプロセスをそのまま書きたい、
という気持ちがだんだん強くなってきた

○小林弘人
日本版『ワイアード』から『サイゾー』へ。日本版『ワイアード』のエディトリアルデザインは、
いまでも斬新で、廃刊雑誌専門古書店ではさぞかし高値なんだろう。
編集者も「損益計算やバランスシート」の読み方を知らなければ、ダメだ。
起業家精神がなければという考えには、妙に納得。

水越伸

デザインというのは原点をたどっていけば社会民主的な活動で、日常の暮らしのなかのものや
道具の造形をよくすることによって、それと関わる人々の精神をよくしていくという考えがあった。
同じようなことがメディア論の世界においても必要なのではないでしょうか

そのためのキーワードになるのが『メディア・ビオトープ』です

レッシグいうところのクリエイティブ・コモンズね。

堀江敏幸

文章を書いたり編集したりすることは、曲解や誤解などもふくめて、いったん中に入れたものを
また出すことで、基本的には翻訳者の仕事と同じだと思うんです。書評でさえ、翻訳の一種だと
考えているくらいですから

仲俣は、ことばの職人として堀江をとらえている。