厠、ご不浄、便所、トイレ…。
特に非水洗トイレは、特に子どもにとって不気味な場所だった。
田舎の母屋とは独立した便所。ああ怖い。
学校の大用のトイレに入ってドアが開かなくなったらどうしようとか。
厠をテーマに編まれた怪談を読むうち、小学生の頃の自分に戻ってしまった。
何篇か紹介。
久々に読んだが、相変わらず喬子は妖しい魅力。
彼女はトイレにいるところをあやまって戸を開けられる。
結末がやはりなんともシュールな話。
ある男が「便所にはいったきり、姿が見えなくなる」。
その湯河原の家は売られる。
四年後、「便所の扉が開く」。消えた男だった。
新しい持ち主は驚く。金隠しで神隠しという話。
「裏二階にある便所」に立つ男女。
混んで入りのかと思いきや、
便所からは出て来る者はいない。
二人は…。
「白い手・赤い手」
夜、便所で用を足すと「天井の方から「白い手がいいか、赤い手がいいか、
青い手がいいか」と声がして、冷たいものに尻を触られたという」
などなど。
今なら便所メシとかネタになりそうだ。なってるかもね。
デートでボートに乗る二人。ボート部出身の男はいいとこ見せようと力が入る。
ところが、突然の便意。湖に飛び込んでなんとかごまかそうとするが。
ほら話のような。木下古栗がいかにも書きそうなお下劣な話。笑える。
理想のゴージャスな便所をつくって有料にする。
このニュービジネスが成功した男。不慮の死を遂げる。
古典落語でも聞いているような味わい。
付記。
このシリーズの『恋』に入っている川端の『片腕』は、何度読んでも
ヘンタイチッかつSFチック(再々読で感じた)でよろしい。
厠にしぼって掲載されている。これも名著。
最近ではなんでもかんでも明るくピカピカにしてしまって情緒もへったくれもない。
3.11後、省エネで灯りを自粛したが、あれぐらいの明るさがちょうどいいと思う者の一人である。