To Be Continued

 

三体

三体

 

 

 
駅に向かう途中に古い3階建てのマンションがある。
以前は男性の老人兄弟の姿を見かけたのだが、
最近はさっぱり。
で、解体となった。
赤く錆びた躯体が年月を物語る。
カビ臭いが立ちこめている。
 
マンションの道沿いに木が立っていて、
そこが小鳥の家になっていた。
生い茂った葉陰から
にぎやかな鳴き声が聞こえていた。
反対運動も実らず(ウソ)
当然、木も切り倒されていた。
小鳥たちは新しい住居が見つかっただろうか。
 
『三体』劉慈欣著 立原透耶 大森望 光吉さくら ワン・チャイ訳を読んだ。
いやはやその風呂敷の広げ具合のすごいこと。
文化大革命VRゲーム『三体』とマル秘プロジェクト。
これらが圧倒的な筆力、構成力でケレン味たっぷり(いい意味で)のストーリーが展開する。
なんだなんだ、『三体』なんだ。これからどーなるんだとつい高速でページをめくらされる。
 
文化大革命はもう過去のものになったのだろうか。
いわばマインドコントロールされた若き紅衛兵たちの餌食となったインテリゲンチャ層。そのシーンが生々しく描かれている。
 
その犠牲者となった「物理学者である父」を持つ娘は偶然かあるいは必然か優秀な科学者となる。国への複雑な思いを抱きつつ新プロジェクトへの誘いを受ける。

VRゲームと思っていた『三体』は、やがてリアルとなる。
三体人からのメッセージの解読に成功する。第何次接近遭遇なのか。
ま、異星人とのファーストコンタクトであることに変りはない。
ティム・バートン監督の『マーズ・アタック』 に出て来る火星人のように
「フレンズ!」と言いながら地球人を殺戮することもあるし。
 
で、To Be Continued
次巻に続くと。
これがなんと三部作シリーズの第一作目。
これからどんな展開になるのか、まったく予想もできない。
ここまで広げた風呂敷をどうたたむんだろう。
翻訳家のみなさーーん、あとは早川書房
次作の早い刊行を願うばかり。
 
書きますた
オリックス生命 BAKUBAKUヴィレッジ
カイセツ教授のビジネス・コーチング  子育て応用編
第4回 「ヤーキーズ・ドットソンの法則」

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エッジとヘッジ

 

ルポ 川崎(かわさき)【通常版】

ルポ 川崎(かわさき)【通常版】

 

 

『ルポ 川崎』磯部涼著を週末に読む。
 
川崎の初体験は大学時代、週に一度体育の授業で
武蔵小杉まで通ったことだ。
当時はタワーマンションなんか影も形も無くて
工場と個人商店の商店街があるって感じだった。
 
次は会社の同僚の親が持っていた登戸のマンション。
ルームシェアで1年間住んだ。
窓を開けると南武線の線路が見えた。
何もすることのない日曜は、川崎球場へ行った。
ロッテファンではないが、
ぶらっと出かけて確実に観戦できたからだ。
球場までの風景はなかなかにディープだった。
 
その次は同じ川崎球場
雑誌広告で落合選手のことを書いた原稿を
当人と広報にチェックしてもらいに。
短時間だったが、落合の強烈な個性を知ることができた。
監督になってもぶれない人だ。
 
長いマクラ。
川崎は、ロンドンの住宅のようにバックヤード(裏庭)が長い。
山側は閑静な高級住宅地の麻生区、タワ―マンションが林立する武蔵小杉など
一括りにはできない。
 
この本は主に川崎駅周辺、いわゆる従来の川崎イメージの強いエリアを
ルポルタージュしている。
 
古くは神奈川金属バット両親殺害事件、川崎市中1男子生徒殺害事件、
川崎市登戸通り魔事件。とあげると物騒なところと思われるが、
東京だってググれば、これくらいの事件は拾える。
 
ガラが悪い、不良、移民が多い、犯罪が多い。
タトゥー、酔っ払い。
血縁、地縁が濃い、新参者にやさしい。
悪い点、良い点が複雑に混在しているエリア。
 
中学校間の長年の抗争は『ビー・バップ・ハイスクール』よりも
なぜか『ウエスト・サイド・ストーリー』のほうがぴったりくる。
 
ラップ、ヒップホップやダンス、スケボーなどのサブカルチャー
自分自身の表現方法であり、
結果的に、現状からのエクソダス(脱出)の手立ての一つだった。
根底にあるヤンキー的、LDHなもの。
そこは芸能界の元ヤン度の高さに通じるような。
インタビューで語られる半生は、それぞれに異なっていて興味深い。
 
来訪者にやさしい、異文化にも抵抗がない。
ゆえにヘイト・デモに屈しない。闘う。
素晴らしい。

ここに突然、友川カズキが出て来るのにはびっくりした。
若い人は知らないだろうが。
YouTubeに楽曲があるはず。
孤高のフォークシンガーは、川崎がねぐらだったとは。

古くから住んでいる人たちには
何やらセーフティネットのようなものができているのだろうか。
生きることへの熱を感じた。
川崎ラゾーナ、行ったな。
フードコートが若い家族連れでごったがえしていた。

岡崎京子の『リバーズ・エッジ』が読みたくなった。

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甘酸っぱい

  

Fear Of An Acoustic Planet [Analog]

Fear Of An Acoustic Planet [Analog]

 

 

去る者は追わず 来るものは拒まず。
今日の名言。

ラジオからシュガー・ベイブ“DOWN TOWN”のカバーが流れる。
甘酸っぱいフォーキーサウンドと切ないハーモニー。
いいじゃん。TAHITI 80だった。モンゴル800じゃないよ。
Youtubeにはあがっていないようだ。
アルバムに描かれた人物、山下達郎っぽいし。
 
『三体』劉 慈欣著 立原 透耶 大森 望 光吉 さくら ワン チャイ訳と
『先をゆくもの達』神林長平著のカバーデザインが似ている。並べると双子みたいだ。
 

書きますた

〇創作はnoteにアップすることにした。
「さまよえる不動産屋」
ご一読をば。

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捕物 取り憑かれ

 

半七捕物帳〈6〉 (光文社時代小説文庫)

半七捕物帳〈6〉 (光文社時代小説文庫)

 

 

浜の真砂は尽きるとも世にミステリーの種は尽きまじ

『半七捕物帳6 新装版
岡本綺堂著を読んだ。
 
『白蝶怪』は、短篇というよりも中篇のボリューム。
真冬に白い蝶がひらひら飛んでいる。
「不吉な暗示」だった。そのからくりは?
主人公が半七ではなく「岡っ引きの吉五郎」。
「半七の養父」。養父も腕っききの目明し。
これは半七外伝。いまでいうところのスピンオフ。
手下や女房を主人公にしてもいけるはず。
 
『地蔵は踊る』
「高源寺の縛られ地蔵が踊る」そうで、
それを目撃した人は流行病の「「コロリ」に執り着かれないという」。
都市伝説かもしれないが、大にぎわい。
半信半疑で見に行くとそこに女性の死体があった。
さて、そのつながりは。
 
巻末の『半七捕物帳』全作品リストが役に立つ。
「作品名、事件が起きた年、場所など」
一覧できる。ふり幅に感心する。
 

f:id:soneakira:20190925140627j:plain

 
 
半七ファンの宮部みゆき先生に
新作つーか続篇、令和版『半七捕物帳』を書いてもらえないだろうか。
または競作でもよござんす。
次は『なめくじ長屋捕物さわぎ』都筑道夫著あたりかな。
「全11巻」だってよ。
 
書きますた
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Rap As Literature Literature As Rap

 
 
MOMENT JOONを知ったのはTBSラジオ『アフター6ジャンクション』だった。
いまのぼくにとっては雑誌的存在のラジオ番組。
日本語、韓国語、英語を駆使したラップの鋭いライムに驚いた。
こんな感じ。YouTubeから引用。
Moment Joon - 令和フリースタイル (Reiwa Freestyle)


Moment Joon - 令和フリースタイル (Reiwa Freestyle)


で、何かと話題のリニューアルして増版となった2019年秋季号『文藝』に
小説の一部を発表している。
完全版がネットで公開されている。
その一部を読んだが、もういっぺん驚いた。
出力するとかなりの枚数。
twitterでリツィートしたが、こちらでも再度告知。

韓国文学のニューウェーブ芥川賞確実?
 
ああ早く本で読みたい。

きょう、マウスが死んだ

 

ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた

ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた

 

 

きょう、マウスが死んだ。
あわてて買いに行く。
仕事上、酷使するのでいっちゃん安いヤツ。
手がちっさいので小ぶりのを。
 
『ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた。』
鏡明著を読む。
タイトルがどことなく植草甚一っぽい。
 
メインは『マンハント』。
それだけでなく『ヒッチコックマガジン』『漫画読本
洋酒天国』『メンズクラブ』などにも及んでいる。
うっすらとは知っていたが、分厚い内容で
マンハント』のAtoZを知る。
 
ネットやスマートフォンがなかった頃は、
紙で得る情報は雑誌や新聞だった。
テレビ局の数が少ない地方では
雑誌は趣味や生き方の教科書、参考書のような存在だった。

ヒッチコックマガジン』は編集長が中原弓彦(小林信彦)で
知ってはいた。ライバルが編集長が都筑道夫の『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』。
 
マンハント』を支えた小鷹信光や山下愉一、編集長の中田雅久
インタビューは貴重。
マンハント』日本版はコラムにも力を入れ
植草甚一田中小実昌テディ片岡らが活躍する。
福田一郎の音楽コラムの文体ってなうじゃね?
 
作者はこう書いている。

「「マンハント」という雑誌が、ミステリ雑誌以上にカルチャー・マガジンだと思えてしまうのは、小説もコラムも、多くのミステリ以外のことを
ぼくに教えてくれたからだ」

 

で、ここが重要。

「ペーパーバックサイズ」

 んで、もって

 

「ヌード・グラビア」

 

 
死語を墓場から一つ蘇らせれば、モダン軽チャー。
日本のカルチャー・マガジンのテンプレになった。
 
おおざっぱだけど、
新青年』→『マンハント』(『ヒッチコックマガジン』など)→『平凡パンチ
→『POPEYE』という流れになるようだ。
 
ぼくが『平凡パンチ』を知った頃は
表紙は大橋歩ではなかった。
高校時代、第二次アイヴィーブームで『メンズクラブ』はバイブルだった。
草森紳一命名したことをかなりあとで知る。
 
予備校生のとき、新宿・紀伊国屋書店
ペーパーバックサイズの『宝島』を買った。
 

開かれ

 

開かれ―人間と動物 (平凡社ライブラリー)

開かれ―人間と動物 (平凡社ライブラリー)

 

 

 
バタイユ湯浅博雄著の補足的なエントリー。
 
『開かれ―人間と動物』ジョルジョ アガンベン著  岡田 温司  多賀 健太郎
を読む。
 
予想したよりずっと読みやすかった。『ホモ・サケル』よりも。
20章からなる比較的短めのテキストは、なめらかで含蓄がある。
くちあたりの良い酒のようだ。
 
翻訳も上手だと思うが、原文も素敵なんだろうな。
どうもこういう実直じゃない修辞的な文体に弱いきらいがあるようだ。
イケメン好きのオバサンみたいだ。
 
例によってバタイユハイデガーフーコーらを下敷きに
論考を重ねているのだが、あらためて“元祖動物化コジェーヴの評価が高いことに気づかされた。
 
四半世紀前には、ヘーゲルニーチェ→ バタイユだと思っていたけど、
ヘーゲルバタイユの間にコジェーブが入るんだ。
コジェーヴの場合は、ヘーゲルマルクスが付加される。
 
ざっと抜書き。
 

バタイユは、高等研究院で、ヘーゲルに関するコジェーヴの講義を聴講していたが、その中心的なテーマのひとつが、実際、歴史の終焉をめぐる問題、つまり歴史以後の世界で呈するということになる自然と人間の姿をめぐる問題であった。歴史以後とは、まさにホモ・サピエンス種という動物が人間になるという忍耐強い労働と否定の過程を経て、それがついに完結を迎える暁のことである」

 

コジェーヴは、人間と人間化した動物との関係において、否定や死の側面を優先するあまり、近代にあって人間(あるいはコジェーヴにとっては<国家>)が逆に自己本来の動物的な生に配慮しはじめるようになり、生権力とフーコーが呼んだものにおいて自然的な賭金にすらなっていく過程を見過ごしているように思われる。おそらく人間化した動物の身体(奴隷の身体)とは、観念論の遺産として思考に遺された解消しえない残余なのであり、今日における哲学のさまざまなアポリアは、動物性と人間性とのあいだで還元されぬままに引き裂かれて張りつめているこの身体をめぐるアポリアと符号するのである」

 

「人間と動物を区分するのは言語である。しかし、言語は歴史の産物なのである。したがって、そういうものとしては本来、言語は動物にも人間にもあてがうことはできない」

 


「現代の文化にあって、あらゆる他の闘争を左右するような決定的な政治闘争こそ、人間の動物性と人間性の間の闘争である。すなわち、西洋の政治学は、その起源からして同時に生政治学なのである」

 

「人類学機械が人間の歴史化の原動力であったとすれば、哲学の終焉と時代に左右される存在目的の完遂は、この機械が空回りしていることを意味している」

 

「動物園の檻は、人間が動物を隔離するものなのか、それとも、動物から人間を隔離するものなのか。この問いかけへの一見自明とも思える答えは、病院、監獄、収容所、戦場、裁判所で日々くりひろげられる光景が脳裡をよぎったとたんに、たちまちあやしいものに見えてくる」

 うーん、なんだか、はまりそうだ。もう、はまってるか。


消えたぼくのブログから。