ニッポンヤバいガールズコレクション

 

日本のヤバい女の子

日本のヤバい女の子

 

 

『日本のヤバい女の子』はらだ有彩著を読む。

 

神話や民話、怪談から選んだ元祖ヤバい女の子コレクション。
まずはネタ元でそのヤバさを取りあげ、
現代の女子の立場から
批評する。というよりもツッコミを入れる。

 

神話や民話の類では理不尽や不条理がまかり通っている。
でも、現実の方がもっとシュールなことも起こる。

 

「いなくなる女の子たち
キレる女の子たち
人間やめる女の子たち
殺す女の子たち
ハッピー・エンドの女の子たち」

 

あっぱれなグルーピング、章立て。
結婚、恋愛、職業、
ジェンダー問題などなど。
そのツッコミが鋭くてチャーミング。

 

スマホもタピオカドリンクもインスタもなくて。
星占いも、パワースポットも知らない女の子たち。

 

神話や民話の構造には物語のすべてが包含されているというが、
変わらない人間の普遍性を垣間見ることができる。
古くて新しいコンテンツ。

有名なところでは
風の谷のナウシカ』と『虫愛ずる姫君』の関係性とか。


この本にツッコミを入れるなら、
ふんだんに収められているイラストが
テキストの読解にときに邪魔になること。

根っからのテキスト派ゆえ、そう思う。
つーかせっかくの文章がもったいない。
なら、いっそのこと漫画版も出せばいいのに。

 

古典を新訳によるブラッシュアップというと
橋本治の『枕草子』かな。
「春って曙よ!」って。

最近では町田康訳の『宇治拾遺物語』。
その拙レビュー。

soneakira.hatenablog.com


書きますた 。漫画の構成も。
オリックス生命 BAKUBAKUヴィレッジ
カイセツ教授のビジネス・コーチング 子育て応用編
第2回 「スケーリング・クエスチョン」
https://www.orixlife.co.jp/bbv/kaisetsukyouju/20190801.html

 

人気blogランキング

父の履歴書

 

 

『生きて帰ってきた男-ある日本兵の戦争と戦後-』
小熊英二著を読む。

 

著者の父親への聞き書き

 

父親は出征して敗戦、シベリア抑留となる。
運よく帰国。

通常だったら、強制収容所ラーゲリ)の日々がメインとなるのだが、
出征前と帰国後の話も
事細かに記されている。

読み終えると、この部分が魅力的。

 

昭和一桁世代。長男でない男子の来し方は
山田昌弘の著作で知識として知ってはいるが、
体験談で聞くとよりリアル。

 

20代はシベリア抑留、それから結核による長期入院。
薄い縁を頼っての再スタート。

 

シベリア抑留というとどうしても詩人の石原吉郎を考える。

「シベリア帰り」と世間から白眼視されたことは、
石原の精神をズタズタにする一因になったのだが。

 

著者の父親は、どういえばいいんだろう。
徹底したリアリスト。
物事をよく観察する。
その積み重ねが学問ではなく現場で洞察力を養ったのだろう。

 

たとえば帰国後の食事。
強制収容所ラーゲリ)の方がましだったと。

災難が起きてもひょうひょうとしている。
大風呂敷は広げない。
かといって野心がないわけではない。

 

職歴と引越し歴を読むと
当時の日本人の出世魚ぶりがわかる。
会社だと主任から係長、部長、役員、社長。
住まいだと、〇〇荘、アパートから〇〇マンション(賃貸)から
〇〇マンション(分譲)、最後は一戸建て。


戦前の中野や高円寺のにぎわいや風情。
戦後に分譲されたばかりの多摩地区。

にしても記憶力が驚くほどバツグン。

 

「1988年、ソ連抑留者に対して日本政府が「慰労金」を出す」


ことになった。
最初、「慰労金」の授受を拒否するつもりだったが、


「朝鮮系中国人の元日本兵に請求資格がないことを知り」


彼と折半しようとする。

まもなく「朝鮮系中国人の元日本兵」たちは裁判を起こす。
「訴訟の共同原告」になる。
しかし「最高裁で棄却」という結果。

 

同世代である亡くなったぼくの父の生き方にもカブる。
父は終戦時、いわゆる予科練で北海道にいた。
そのとき、ホッケの干物は一生分食べたといって
ホッケの干物は食べなかった。

 

日本共産党が主導した1946年5月の「食糧メーデー」のなかで、
著名になったプラカードは、「憲法よりメシだ」というものであった」

 

憲法よりメシだ」「憲法より年金だ」はは。歴史は繰り返す。


石原吉郎に関する過去レビュー。

soneakira.hatenablog.com

soneakira.hatenablog.com

soneakira.hatenablog.com

http://soneakira.hatenablog.com/entry/2014/10/14/154639

soneakira.hatenablog.com

人気blogランキング

蓮華(れんげ)

f:id:soneakira:20190729120017j:plain

 

今年もみどろが池に蓮の花が咲いた。私は子どもといっしょに生家のそばにあるみど
ろが池のまわりを散歩して、藤棚の下でひと休みすることにした。幼い頃見ていた風景
と変わらない景色。私には、一卵性双生児の姉がいた。七歳の誕生日をすぎたばかりの
夏のある日、ここで私と遊んでいて、姉はあやまってみどろが池で溺れて死んだ。

 

溺死ということになっているが、ほんとうは私が姉を池に突き落としたのだ。生まれ
ついて私には姉がめざわりでしょうがなかった。姿・形は瓜二つだが、年を経るにつれ、性格は異なってきた。姉は社交的で、私は引っ込み思案。喧嘩をしても悪戯しても、要領の悪い私ばかりが叱られていた。その様子をこっそりドアの影から覗いては、ほくそ笑む姉。徐々に姉への殺意が蓄積されていった。

 

蝉が狂ったように鳴いていた。私は周囲を確認した。池一面に咲いている薄桃色の蓮の
花を見ようとしている姉の後姿に体当たりした。蝉しぐれが、止まったように思えた。
あっけなく姉は池に転落した。しばらくしてから蓮の花の間に、赤いリボンのついたお
揃いの麦藁帽子だけが水面に浮いていた。泣き叫びながら私は、助けを求めに行った。

姉には申し訳ないとは思うが、姉の存在がなくなってから、まるで憑き物が取れたよ
うに私は明るくなった。男三人兄弟の末の女の子だったので、両親からの愛を独占して
大きくなった。やがて親戚のすすめる人と結婚して、この子が生まれた。女の子だ。

 

娘がよたよたと池に向かって走り出した。私は制止しようと後を追った。池の渕で子
どもを捕まえた。その瞬間、誰かに体当たりされた。子どもを助けようと放り投げ、私
はみどろが池に落ちた。沈んでいく私。それを目にして、ほくそ笑む娘。なぜ。…その
顔つきは、姉にそっくりだった。というよりも、姉そのものだった。

 

人気blogランキング

ふられる

 

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)

 

 

昨夜は、一瞬、豪雨だったが、
帰る頃は傘をささなくてもよい程度の雨。
午前中、買い出しに行って
帰りに雨。台風のせいだろうか、
次第に強くなって結構濡れる。
出かけるとき、怪しい飛翔体を発見。
実はトンボだった。

 

『半七捕物帳 1 新装版』岡本綺堂著を読む。

 

都築道夫の解説の引用でいいたいことはすんでしまう。

 

「『半七捕物帳』は、きわめて独創的で、質の高いエンタテイメントで
あって、大衆文芸の古典なのである。しかも、ただ古典として、記憶
されているだけではない。すこしも、古くなっていない。まるで、ことし
書かれた小説のようだ」

 

「捕物帳の元祖」が、このできばえなら、
乗り越えていくのは至難の業。

 

岡っ引き半七は和製ホームズだそうだが、
ホームズほど慇懃ではない。
江戸風情と人情。

 

江戸の頃には狐、狸はおろか
河獺(かわうそ)がいたとか。
それが河童に見られた。

 

 

人気blogランキング

セミヌード

f:id:soneakira:20190725145143j:plain

 

セミの鳴き声を聴く前に死骸を目にした。
昨日、公園を自転車で通り抜けると
セミがようやく鳴いていた。

 

公園の入り口付近にあるジャブジャブ池では
子どもたちが水に浸かりながら遊んでいる。

 

子どもが小さいとき、
この時期、水辺を見るとスカートや半ズボンを、
ときには下ばきまで脱ごうとして慌てさせた。
ヌーディストビーチじゃないだろっ!」と
ノリツッコミをしていた。ウソ。

 

うっかりサーキュレーターのタイマーのセットを忘れて
寝たものでカラダがだるかった。

 

『半七捕物帳 1 新装版』岡本綺堂著を読了。
噂の『三体』劉 慈欣 (著)
大森 望 (翻訳)光吉 さくら (翻訳)ワン チャイ (翻訳)立原 透耶 (監修) を
読んでいる。
机上のタイムワープ。

 

有給休暇をとったので、
新しい仕事用にプロフィールを改訂する。
で、それがOKとなればトライアル原稿を1本書く。
パスすれば継続となる。

 

今朝、郵便局へ行った帰り
轢かれてペシャンコになったヒキガエルを見た。

 

人気blogランキング

『全ロック史』を読む-2

 

全ロック史

全ロック史

 

 

『全ロック史』西崎憲著を読む。の続き。

 

作者はロックをこう定義している。

 

「ロックミュージックとはエレクトリックギターとドラムを用い、ヴォーカリストがいて、リズムがアフタービートの音楽を指す」

 

基本だけど、その多様性はどうだろう。
花でたとえるとバラ科のようだ。
サクラもイチゴもバラ科

 

この本のもう一つの魅力。
それは索引が充実しているところ。

歌詞出典、引用・参考文献、
年表、ミュージシャン・バンド名索引、
アルバム名索引、曲名索引。
だからロックの辞典、事典、人典(人物紹介のこと)として
使える。

 

たとえばビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』を短く引用すると。

 

「『ペット・サウンズ』は史上初のコンセプトアルバムと言えるものであり、逆にビートルズに影響を与えている。前述したように、同アルバムがなければ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』はなかったと、ジョージ・マ―ティンは述べている」

 

ロックのルーツはブルース(ブルーズと発音しないとピーター・バラカンに叱られそうだが)などの黒人音楽だが、巻末の「年表」によると


「1843年 白人が黒人を演じる―略―「ミンストレルショー」が流行しはじめる」


だそうだ。
シャネルズの元祖じゃん。
ミンストレルショー」はヴォードヴィル系だけど、
音楽に純化するとブルー・アイド・ソウルだよね。


知らないバンドの楽曲が目についたら、耳に残ったら、
この本で検索してYoutubeで聴くことができる。

 

Eテレとかで番組化してくれないかな。ラジオでもいい。
回数的にちょうど2クールぐらいだし。


人気blogランキング

『全ロック史』を読む-1

 

全ロック史

全ロック史

 

 

猫の額よりも狭い庭がジャングル化。
完全に隣家に侵入したシュロを脚立にのって切る。
切れない、切る、切りにくい、切る。

30分程度の作業で赤いジャージは汗まみれ。
45ℓのゴミ袋2つにまとめる。


シャワーを浴びて自家製甘酒の炭酸割を飲みながら
『全ロック史』西崎憲著を読む。

分厚い。本文510ページ余で3800円+税は

お得でっせ。

 

人の数だけロックがある。
だからロック偏狭主義者対象の

深くて濃い各論の音楽書は山のようにある。

 

この本は、総論。
ロックの総論を書くとは、なんと無謀な試みだろう。


ぼくは、片岡義男の本でカントリーやプレスリーを知った。
大瀧詠一山下達郎のラジオでアメリカンポップスを知った。
ハードロックやヘビーメタルは苦手で。
ヒップホップもきちんとした歴史は知らないし。
それからまったく知らなかったロックの分野にも光を当ててくれる。

 

作者は作家、翻訳家、アンソロジストで高名だが、
楽家でもある。
ロックについて実作者の立場からも書ける。


サウンドばかりじゃなくてそして作詞の評価もお手のもの。
系統樹のようにロックのカテゴリーを過不足なく紹介する。

 

章立てがユニークでタイトルがチャーミング。

 

そうか!読んでいるうちに小林信彦の『世界の喜劇人』、

『日本の喜劇人』のような本かと膝を打った。

 

―続く(予定)―

 

人気blogランキング