高いところから



天皇は皇居の高いところから下界を見て
かまどの煙が 出ていないことに 気づき 民を救済した

長者は御殿のような新居を普請
上棟式で 餅や銭を ばらばら ばら撒き 大盤振る舞い

カメラマンは煙突に上って自撮り
トマソン煙突 高所恐怖症には恐ろしい一枚

ラスベガスのホテルの32階から男は
野外音楽コンサート会場めがけて自動小銃を乱射

宇宙エレベーターのカゴがもし外れたら
カゴは永遠に地球を周回し続けるのだろうか

ホームドアを軽々乗り越えて飛び込んだ人
高い防潮堤を楽々乗り越えた津波

乗っていた雲から落ちた仙人
若い女性の太ももにクラっと来た

谷底の高層ビル 再生よりも破壊の印象が拭えない
頓挫したバベルの塔の話をふと思い出す

 

高いところから鳥の眼で俯瞰する不遜さ
低いところから虫の眼で仰視する卑屈さ



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メタメタ


『主の変容病院・挑発』スタニスワフ・レム著には
「架空の歴史書の書評」が載っている。
ひょっとして同じスタイルの『完全な真空』の先駆けだろうか。

『ジェノサイド』ホルスト・アスペルンクス著の書評から引用。

 

ナチスは政治における新参者であった。よじ登って到達した高みでは、
その世界の権威から認められようと絶えず渇望する成り上がりだった」

 

 

最近できたエダノンじゃない方の政党にも通じるような。

 

「政治において、ヒトラーは完全に唯我独尊だった。道徳原則などは
持ち合わせていなかったか、あるいは自らの巨大なヴィジョンに照らせば
取るに足らないものでしかなかった。そしてそれらのビジョンが
次から次へ、累々と積み上がる死体の山に変貌していったのである―
この過程をカネッティほど見事に描いたものはいない」

 

 

最近できたエダノンじゃない方の政党にも通じるような。

外国人ゼロ
サヨクゼロ
のぞみゼロ
押し付け9条ゼロ
退廃芸術ゼロ

おっとつい横道に。
こういうスタイルにすると、
言いたいこと言っても、
と作者は述べているだの、作者はそう感じたに違いないだの
と言いつつ、自分の主張や考えをこっそり伝えることができる。
メタフィクション、メタメタフィクション
メタメタになって収拾がつかなくなる。んなこたあない。

読みたくなるから、すごい筆力。
「架空の歴史書」を知らなかったら
ネット検索したかも。

ナチス・ドイツに占領された体験からの
反戦反核、反ジェノサイド。

原稿を送ってから仕事の資料本を買いに行く。
リアル書店は立ち読みができるので
つい長居をしてしまう。
まだカズオ・イシグロコーナーは
できていなかった。

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一字違いで


ファッションリーダーとファッショリーダー、
一字違いで大違い。
アパレル関係と暴れる関係、
一字違いで大違い。
レム睡眠とラム睡眠。
後者はラム酒を痛飲して泥酔すること。

『主の変容病院・挑発』スタニスワフ・レム著と
『バナナ』獅子文六を併読したら、
読むスピードの違いにびっくり。

『主の変容病院・挑発』スタニスワフ・レム著を読む。
スタニスワフ・レムコレクション、全6巻のフィナーレ。
「処女作にすべてがある」
誰が言ったかは知らないが、
文学、音楽、映画など全般に言えると思う。
レムは医学部(医学校)出身。
人間を対象にする学問。
医者兼作家って意外と多いのは
人間観察を生業としているからなのだろうか。
舞台は「ナチス占領下の精神病院」。
ナチスが登場するのは終わりの部分。
重苦しい戦時下ポーランドの精神病院が
リアルに描かれている。
医師と患者のやりとり。
いつドイツ兵が攻めてくるのか。

ただし精神病院の閉ざされた空間が
20世紀ではなくて中世だったら。
精神病院を宇宙船にも見立てたら。
ドイツ兵をエイリアンやそれこそ
インベーダーに見立てたらSFになる。
硬質で精緻で知的。
で、シニカル。意地悪。
その後のレムの世界が、もはや構築されている。

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10月は黄昏の国

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

ブラッドベリの名著から引用。
黄昏の国、日本。
選挙だけど、本家八ツ橋と元祖八ツ橋、
山本屋本店と山本屋総本家、
どちらを選べと言われてもなあ。
改めてリベラルの実態の希薄さと
打たれ弱さを感じる。
黄昏に飛翔するのは、
ミネルバのふくろうか、それとも。

『母の記憶に』ケン・リュウ著を読む。
趣向の異なる「16篇」、堪能しまくりました。
自分のルーツである中国と第二の祖国アメリカ。
そこにまつわる差異、差別などを
SF風味に仕立ててアイデンティティを問うている。
で、以下、短い感想をば。

『烏蘇里羆(ウスリーひぐま)』
ケン・リュウ版『白鯨』。
帝国陸軍からハンティングを依頼された男と
巨大羆との戦い。
馬がロボットなんだけど、カッコいい。
どこもかしこもスチームパンクの世界。
憶測だけど、作者も日本の特撮モノやアニメーションに
影響されているのだろう。
伊藤計劃が生きていたら、さぞかし喜ぶ作品。

『母の記憶に』
難病の母、地球にいては生存が望めないと
娘のために宇宙へ。
母は老いることなく
娘の方が老いていく。
ショートショートなんだけど
その深淵さはブラックホールなみ。

『レギュラー』
世界の中心で愛を叫んだけもの』の著者ハーラン・エリスン
真っ青の近未来ハードボイルドつーかミステリー。
冒頭のキモい殺人シーンなんて映像が浮かんだものね。
こういうのもうまいとは。
「私立探偵ルース・ロウ」。
このキャラでシリーズものを期待する。

『存在(プレゼンス)』
介護の未来形。
スマートフォンで安否確認できるとかの
進化したもの。
それでも間もなく最愛の母を失うという息子の心境が
描かれている。
ロラン・バルトの『喪の日記』じゃんと思った、マジ。

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ことないですか

無洗米洗ったことないですか


100均でいくらと聞いたことないですか


交通事故で血だらけの人に痛いですかと
尋ねたことないですか


引くドアを一生懸命押したことないですか


ロシア人に英語で話しかけたことないですか


保守なのに革新のふりしたことないですか

革新なのに保守のふりことないですか


イクメンじゃないのになんとなく
イクメンぽくしたことないですか


もんじゃ好きじゃないのに
好きと言ったことないですか


勝負にならないのに勝負パンツ
はいていったことないですか


元カレ元カノに友達申請したことないですか


笑うつもりが大泣きしたことないですか


錆びたナイフを砂山に埋めたことないですか


3秒ルールで落ちたパン
食べたことないですか

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曲がったことが大嫌い

信子 (朝日文庫)

信子 (朝日文庫)

 

記事を提出したら、新規の依頼が。
助かります。
ぼくがカンダタなら天上から降りてきた蜘蛛の糸、
貧しき同業者とシェアするよ、たぶん。

♪曲がったことが大嫌い、小宮山信子です♪
(by原田泰造 替え歌)
『信子』獅子文六著を読む。
女性版『坊ちゃん』でレビューは済んでしまうのだが。
夏目漱石の『坊ちゃん』は、江戸っ子が四国の学校に赴任するが、
こちらは逆。大分から東京の私立学校に赴任する。


そこでのさまざまなカルチャーショック。
ギャップが笑えるし、いろんな対立は物語に面白さを出す。
体育しか教員の枠がなく、体育教師と女子寮の舎監になる。
私立ゆえ経営陣はビジネスを考える。
校長は女子教育の理念を追う。
この図式はいまも変わらないだろう。


九州女子の正義感で何事にも立ち向かう。
いいこともあり、そうでないこともあり。
変わらないところをチクチクやるから
古びていないのかもね。
女子高なんでちょっとエスっぽい。
当世風に言えば百合系か。
終わり方が、いかにも続編が書けそう。
奥泉光あたりが続編を書かないかな。
とにかく作者は無類の漱石ストだったようだ。
見事な本歌取り

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今日の出来事

明け方、老猫をケージから出す。
朝ご飯をあげるとガツガツ食べる。
若い時分は偏食で食も細かったのだが。
満足するとピックアップして
籐椅子に置くと爆睡する。
で、こっちも二度寝しようという作戦。
足りなかったらしい。
椅子から降りる。
しかとする。鳴く。
寝かしつける。一瞬、寝る。
すぐにむくっと復活。
玄関先にところ払いをする。
眠気が失せてしまったので追加ご飯。
パクついている間に、
ケージ内のペットシーツを交換する。
今までの猫砂のトイレは忘却してしまったようだ。

朝、伸び放題のシュロを切る。
塀越しで隣の家に侵犯している。
南天などもちょっと切る。
涼しくはなったが、汗をかく。
虫除けスプレーをしたが、
やぶ蚊はお構いなしに来襲する。
梔子は後日。

『信子』獅子文六著を読みだす。
『主の変容病院・挑発』スタニスワフ・レム著と
『母の記憶に』ケン・リュウも。

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