おサキにどうぞ

クローヴィス物語 (白水Uブックス)

クローヴィス物語 (白水Uブックス)


プリンタの調子が悪く出力できない。
困った時のベーシックな対処法。
プリンタのコンセントを引き抜いて、
パソコンを再起動。
何かあったんですかと言わんばかりに
出力するプリンタ。

フリンとプリンタ。
風鈴とプリンタ。
プリンとプリンタ。
プリン体とプリンタ。
リンダとプリンタ。

『クローヴィス物語』サキ著を読む。
サキって昔、英語の長文読解に出ていたような記憶がある。
あとは、ラッセルとか。
なぜ読んだか、半分は挿画を描いているのが
エドワード・ゴーリーだから。
知らなかった。
実際、ぴったしかんかんで、
彼の起用を考えた編集者はエライと思う。

サキの代名詞というと
「辛辣な風刺と残酷なユーモア」。
訳者あとがきによると、なんでも「オリジナル短篇集」が
いままで出ていなかったと。意外。

仕事の行き帰りに、ちょうどよい短編。
確かに底意地が悪い。
とりすました上流階級のベールをはがしてみたり。
欲に憑りつかれた人々のあさましき顛末などなど。
ミャンマー生まれ」とはいえイギリス人。
『モンティパイソン』にもつながる黒い笑い。

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うれしさも半分

長いお別れ

長いお別れ


新装開店の店に人が集まる。
オープニングセールの
目玉商品に群がるジジ・ババ。
最初は混んでいたその店も鮮度が薄れると、
昔からある地域ナンバーワン店に客が回帰する。
政党も同じじゃ困るんだけど。
ほらオープニングしたばっかだと
スタッフがレジや接客に不慣れだったりする。
すると、お客さまはカチンときてクレームの嵐。
都議選、うれしさも半分ほどか。
ぼくが投票した人は落ちたもの。

久しぶりに週末仕事がないので、
『長いお別れ』中島京子著を読む。
元校長だった父親(夫)が認知症になる。
それをめぐる妻や子どもたち、その家族の話。
作者の介護体験に基づいているそうだ。
大変だが暗くはない。
老母は達観しているが、子ども、特に娘たちは
世間体を気にしながら介護に取り組む。
よくあることだが、どちらが献身的だったかなど。
でも娘は役に立つ。
まったく役に立たないのは、息子、男だ。
何もできないくせにもっと世間体を気にしたりする。
親は嫁よりも娘を頼りたがるようだが、
ボケてしまえなみな同じ。

元校長のキャラが魅力的。
良質のホームドラマを見ているようで、
一気に読了する。
ラストにほろっとくる。このお…。
『長いお別れ』とは、認知症のことを英語でそう言うらしい。
ボケたら長生きする。

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ノット・サティスファイド

大杉栄伝: 永遠のアナキズム

大杉栄伝: 永遠のアナキズム


今回のエントリーのタイトルは、
アナーキーの『ノット・サティスファイド』か
遠藤賢司の『満足できるかな』、どっちにしようと迷った。

大杉栄伝 永遠のアナキズム』栗原康著を読む。
順不同で著者の本を呼んでいるのだが、
この本は初期に書かれたもので
いまのような文体が確立される前だし、
博士論文として書かれたもののようだし。
ゆえに作者の論考に対して引用個所が多くて、
それはそれで参考になる。

大杉栄職業軍人の家に生まれたのは意外だった。
反面教師になったのか。
性的に早熟だったらしい。なるほど。
出来は良く、とりわけ語学はできたらしい。
思想犯で幽閉中にエスペラント語やフランス語を習得したとは。

当時最新の思想だったベルクソンと進化論に
惹かれたらしい。クロポトキンの著作を訳し、
「アリの相互扶助」こそが、何やら大杉の目指す社会、世の中だったようだ。
ほら、働かないアリがいてこそ、アリの社会は成立しているって
聴いたことあるよね、それかと。
風呂敷広げると社会的強者と弱者の共存。
みんなの好きなダイバーシティのことじゃね。

米騒動が当時の日本人の人口の
「6人に1人が暴動に加わっていた」
とは、驚き。
南米あたりで暴動が起き、店舗が襲われ略奪に合うシーンを
ニュース映像で見ると、日本は平和なよい国だと思いがちだが、
100年ほど前は同じようなわけだった。

大杉はアナーキストゆえ
働くことをしなかった。
あ、語学教師はしたが。
原稿料か、そのバンス(前借)か。
あるいは無心に行く。
人たらし的ところが、たぶんにあって
実業家や右翼の大物でも
大杉の思想には賛同しなくても
人間性に興味を抱き、金をくれた。
もらった金は、たまったツケや貧しい仲間にやるなどして
すぐつかってしまう。
語学に堪能なのか、恥に鈍感なのか、
中国やフランスに行っても
ものおじしない。そこは、痛快。

お上のいいなりにならない。
ストライキサボタージュを呼びかける。
既成のものは、くそくらえだ。
自由恋愛を実行して嫉妬から刺されても、だ。
ミカン箱に入っている一個の腐ったミカンが
やがて周囲のミカンを腐らせる。
とでも、思ったのだろう。

武道の一つである「棒術」の達人でもあったようだが、
多勢に無勢。
なんとも凄惨な最期を迎える。
んで、この国は戦争することになっちまう。

無政府主義。小さな政府どころか政府は不要だと。
ルソーの「自然に還れ」どころか
「野獣に還れ」が大杉だと作者は述べている。
為政者というよりも偽政者。
愉快なおじさんではないか。
ただし身内にいたんじゃ、やりきれんかもね。

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誰も知らないポール・オースター

冬の日誌

冬の日誌


湿度がこうも高いと
カラダはシャワーを要求する。

『冬の日誌』ポール・オースター著を読む。
数十年ぶりの著者の本。
元妻リディア・デイヴィス経由で読むとは。
この本は、自伝、自叙伝の類。
私小説と括れないこともないが、
そこはクセがすごい(by千鳥ノブ)作者ゆえ
単なる直球ではない。
結構波乱万丈。
ユダヤ人であることや
ヰタ・セクスアリス
家の履歴書、住んだところで記す思い出、
母親の回想、
なぜ母親を語るとみな、
ロラン・バルトみたいになるのか。
まったく違うんだけど、
小島信夫の晩年の小説にも似ているなと思った。

あるいは、ミュージシャンがベスト盤を出して
ライナーノーツまで自分で書く。
そこには、うまくいったこと、いかなかったこと、
影響を受けた曲や隠し味など、
当人でなければ知らなかったことが
案外ぽろっと述べられている。
これはインタビューでは出てこないか、
著者校でがっつりカットになったりする。
それにも似ている。

『冬の日誌』とは、作者自身が
人生の冬季に入ったことを意味する。
人生の春はみずみずしく、
夏は情熱的で、秋になんとなく黄昏る。そして冬。
植物でも一年草以外は、冬は次の春のために
備える季節とか言われるが、
人間も一年草で、あとは死を松の実。
違った、待つのみ。か。
ヤングな君よりも
非-ヤングな君が読んだ方が沁みる。
『内面からの報告書』も読まないと。

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ピンポンやろうぜ

ピンポン (エクス・リブリス)

ピンポン (エクス・リブリス)


なんとなく波が引く。

『ピンポン』パク・ミンギュ著を読む。
いじめられっ子同士の「釘」、
もちろんあだ名に決まってます。
そして「モアイ」。
こっちはあだ名じゃなくて
本物のモアイ像。
二人はピンポンを始める。
そこに卓球台があったから。

ピンポンは暗いインドアスポーツ。
んなわけない。
温泉場でピンポンすると
なぜ熱くなる。
高校の時、新聞部室で
なぜかピンポンをおっぱじめて
先生に叱られた。

でも、いじめらっれ子だから
当然、いじめっ子はいる。
忘れた頃にいじめられる。
卓球台があったから、
二人は、ピンポンをやりだす。
でもスポ根ドラマと違ってゆるーい感じ。
合間にピンポンのウンチクなどが述べられる。
そう言えば『行け!稲中卓球部』にはまっていた頃があった。

背景などほとんど描きこまれていない
白地の多い漫画みたいな世界。
松本大洋とか。
同名の名作『ピンポン』もあるし。

厨二病は、大人になりきれていない若者を
指す言葉だが、釘とモアイの二人組は
心身ともにどう見ても厨二病だ。
良く言えばナイーブ、悪く言えばウジウジ。

突如天から「巨大なピンポン球」がやってきて
クライマックスを迎える。
ゆるーいクライマックス。

卓球台のある原っぱは、
ムーミン谷であり、
ホールデン・コールフィールドライ麦畑。
アラレちゃんのペンギン村でもある。

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集まった知性は遅くなる


『鈴木さんにも分かるネットの未来』川上量生著を読む。
鈴木さんとは元スタジオジブリのプロデューサーの鈴木さん。
アナログ世代のおじさん代表。
その人にネットのこと、これからのネットのことを
レクチャーしてくれる。
他にも、UGCとプロ・アマの垣根、
電子書籍と紙の本の違い、
コンテンツがプラットフォームに牛耳られないためには。
などなどが書かれていて、
通しで読むと頭の中のもやもやが晴れる内容になっている。
著者は、ドワンゴの人でニコ動の人で
今はKADOKAWA・DWANGOのトップの人。
ネットとリアルの共存とか。

で、一番面白かったのが、集合知について述べられた章。
集合知というと何かすごいいいイメージを持たれがちだが。

集合知は人間よりも頭が悪いというのが本質であって、
知性が集まって頭が良くなるのは特定の条件下で発生する例外的な
現象だと、ぼくは考えているのです」


そっか。だから、ぼくは、だらだら続けるブレーンストーミング
嫌いなんだと。

「集まった知性は遅くなる」

 

 


その例として民主主義を挙げている。

 

「法律をつくるためには、法案の内容を国民に周知させ理解を得ながら、
各議員も法律の内容を勉強し、国会で多数決で議決する必要があるのです」

 

この場合、遅くて構わない。ところが、ネットになれているせいか、
昨今、すぐに決めたがるせっかちな人が多い。
すぐにキレる人でもある。

じゃあ、どうすればいい。
「自律分散システム」で、いけと。

ばらばらでいっしょってこと。
イコール「創発」だと。
たぶん、それはリゾーム
いやあ深い。


近い将来、テレビはインターネットテレビになると。
じゃ、どんなことが楽しめるのか。
電子書籍の出現が出版社の存続を問うように、
ネットテレビがテレビ局の存続を問うらしい。

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選択から一択へ

選択しないという選択: ビッグデータで変わる「自由」のかたち

選択しないという選択: ビッグデータで変わる「自由」のかたち

 

『選択しないという選択』キャス・サンスティーン著を読む。
「デフォルト」について書かれた本。

わかる、わからんね。
ビッグデータの時代とかで
ネットショッピングなどの購買履歴や
twitterなどのツィートなどから
その人の趣味・趣向がわかってしまって
「デフォルト」が可能になったと。
ふさわしい日本語が見当たらないが、
要するに最初から最適解が提示できるようになったと。
最適な食べ物、飲料、家電。
政党、テレビ番組、映画、音楽、ファッション、
ペット、性行為などなど。

「選択する自由」、「職業選択の自由」とか言うけど、
行動経済学に興味のある人なら、
人は選択肢を与えすぐると選べなくなるそうだ。
カラバリが多すぎると困ってしまう。
松竹梅など三択がいいあんばいらしくい。
とはいえ、「デフォルト」。いきなり、イチオシ。
これでしょ、これっきゃない。
それはどうなのよと検証している。
押し売りと感じるのか、親切と感じるのか。
ぼくはへそ曲がりだから、
当たっていたとしてもOKとはしないだろう。

選ばないと選べないとでは意味合いが違うが、
結局は選択拒否という行為では同じなわけで。

「デフォルト」は、政治・経済から広範な分野を串刺しできる
便利なものさしだ。

確かに一択という日本語は変だ。
でも、「デフォルト」って一択のことなんだよな。
選択や思考などのショートカットと言えなくもないが、
大きなお世話感は拭えない。
個人的な感想です。
デフォと言うらしいが、なんかアフォに似ている。
次、いってみよう。

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